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学校の怪談  一人目 語り部(木下栄作) Aルート「泣き声」 その2

学校の怪談
08 /10 2017
「あぢぃ、あづいよぉ……」
授業中なけなしの気力を振り絞って、呻くように誰かが言った。
外ではジージーと絶え間なく、オスの蝉が求愛している。
油で揚げるような鳴き声であるため、アブラゼミと呼ばれているようだが、聴覚で暑さを感じる虫の鳴き声など、何処を探してもこの虫以外いないだろう。
一限目のホームルームが終わった後、小池の元に手団扇で自らを扇ぐ田嶋が近付いてきた。
「昨日の夜は急に横殴りの雨が降って、大変だったな」
「そうだね。窓がガタガタ煩くて、眠るに眠れなかったよ」
他愛のない会話をしていると、田嶋は唐突に
「小池、元気なさそうだけど……」
と訊いた。
「えっ、ああ……別に大丈夫だよ」
小池は歯切れの悪い返事で答えた。
結局自分のバッシュの中に蚯蚓を入れたのは、いったい誰だったのか。
どうせ上級生の仕業に違いない。
そうだ、僕に嫌がらせをしてくるのは、あいつらなんだから!
理性で胸の声を掻き消そうとした。
しかし小池の疑念は、皮肉なことに考えないようにしようとすればするほど、小池の心を蝕んでいった。
二年生、三年生たちは一年生が片付けをし終え、ロッカールームに戻った時には蛻(もぬけ)の殻だった。
となると、残された選択肢は一つしかない。
―――もしや、同じ一年生のバスケ部の誰かが自分を陥れようとしているのでは、とな。
「嘘だ、また先輩たちにいびられたんじゃないの?」
田嶋は小池の顔を覗き込む。
田嶋は純粋に小池を心配して、声を掛けたのだろう。
しかし小池の眼には、田嶋の穏やかな表情も、腹に一物抱えていることを悟られないようにするための、偽りの笑顔にしか見えない。
「心配しないでも大丈夫だよ。田嶋くんの方こそ平気なのか」
思わず視線を逸らし、小池は話を変えた。
「いや、何もされてないならいいんだ。昼飯はナベも誘って皆で食べようぜ」
「私とコーイチ、どっちが大事なのよっ!」
同級生の渡辺がお道化(どけ)て、田嶋に抱きついた。
「ああ、ナベ。今、ちょうどお前の話を……」
「ごめん、二人とも。ちょっと用を足してくるね」
小池はそう言い残し、トイレに向かった。
尿意や便意を催したわけではない。
ただ疑心暗鬼のまま輪に加わっているよりも、一人でいる方が気楽だったんだろう。
家では努めて明るく振る舞っていた。
「学校はどうだった」
そう聞かれて
「別に、いつも通りだよ」
と言ってしまう自分が、嫌で嫌でたまらなかった。
でもな、その後小池にもそのことを気楽に話せる相手ができたんだ。
耳にしたことはないか?
「体育館倉庫で、何者かがすすり泣いている」
って噂を。
……そのまさかだ。
七月のある日、小池は朝練が終わった後、先輩たちの使ったボールを両脇に挟んで、五段のボール棚に手早く戻していた。
面倒臭いから適当でもいいから早く終わらせようって考えも当然あっただろうが、それ以上に体育館倉庫の独特な雰囲気が苦手だったんだろう。
ほら、体育館倉庫っていかにも出そうじゃないか?
壁一面を黒ずんだコンクリートに覆われていて、真っ昼間でも妙に薄暗くてさ。
そこそこ広い筈なのに跳び箱やらボール棚やら折り畳まれたマットレスやらが幅を取っていて、まるで独房みたいな狭さだ。
朝なら小さな窓から日の光は射し込んでくるが、
光との対比で、陰もより深くなったように感じるし、正直好き好んで出入りするような場所じゃあない。
小池も例外ではなかった。
練習着のTシャツは汗塗れで、肌にぴったりと密着して気持ちが悪い。
早く着替えなきゃ……。
倉庫を立ち去ろうとしたその時だった。
ズズ、ズズ……と奇妙な音が聞こえてきたんだ。
小池は慌てて窓を開け、ウツボのように窓から首を出して確かめた。
しかし、人の気配はない。
そして、ふと渡辺の言葉が蘇った。
「この体育館倉庫で殺された男子生徒が、一日中泣いているんだってさ」
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yuu_garakuta

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