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恋愛・青春小説 「PIKE START」  空の花、地上の花 その2

恋愛・青春小説「PIKE START」
05 /11 2018
駅から徒歩20分以上掛け、俺たち四人は会場に辿り着いた。
いつもは見渡す限り灰色の多目的広場が、今日は鮮やかな色彩を帯びていた。
なかでも一際目を引くのが、赤、紫、白の法被(はっぴ)にパンツという出で立ちの、太鼓を叩く男衆。
そして彼らを取り囲むように踊る、右袖が朱、左袖がベージュの左右非対称な着物を着た婦人たち。
奥の方には青白の縞模様が特徴的な、露店テントが並んでいる。
遠くからでは、いったいなんの店なのか判別しにくい。
店頭の商品名の書かれたのぼりが、唯一の目印だ。
耳には地元で親しまれている歌謡曲が、流れ込んでくる。
俺が幼少の頃から、夏祭りでは定番曲。
市制10周年記念で作られたようで、俺の両親の代から、脈々と受け継がれている。
ドドンドンドン、ドドンドンドン……。
リズミカルな太鼓の音を聞いていると、幾分か心拍数が早くなっていくのを感じた。
まだ外は明るく、提灯は吊るされていないが、祭り特有の活気に、俺は心躍らせた。
「なぁ、いろいろ見て回ろうぜ」
興奮を抑えきれず、俺は横一列から飛び出して、踊る人々の合間を縫うように進んでいく。
「こら、置いてくな」
理沙も、俺の後をついてくる。
「あっ、待って」
後ろから小早川のか細い声がして、思わず振り返った。
俺たちを追う小早川は、着慣れていない浴衣のせいで、杖を突いて歩行する老人のようにたどたどしかった。
「小早川さん、悪いね」
「ごめん千尋、急かしてるみたいで」
再び列に並ひ直す。
「急がないで大丈夫だよ。僕も浴衣だからね」
わっつんは小早川と歩調を合わせ、摺り足で彼女の半歩前を歩き、時折振り返って
「転ばないように、気をつけて」
と気遣っていた。
「ありがとう、若林くん」
上目遣いで、小早川はわっつんに視線を注いだ。
優しげな印象を与える、半月型の垂れた目。
削った鉛筆で描いた漢字の1のような、シャープな眉毛。
紅褐色の髪。
横から眺めると、斜め45℃の小さい鼻。
厚ぼったい下唇。
リップを塗った口元は、テカテカ光っていた。
表情が乏しく、あまり自己主張しないものの、それがかえって洋物人形のような美しさを引き出していた。
彼女の吸い込まれそうな真っ黒な瞳には、彼しか映っていない。
わっつんは、円を描くように動かした指先を見つめるトンボみたいに、目をぐるぐる回していた。
どうやら恥ずかしくて、小早川を直視できないらしい。
二人の間に、独特の甘い空気感が漂っていた。
割り込むことはおろか、声を掛けることすらためらわれた。
「ねぇねぇ。千尋と若林、いい感じじゃない?」
俺を肘で小突き、理沙が小声で言う。
わっつんは誰にでも分け隔てなく優しいけれど、傍から見れば、さながら恋人に対する気遣いだ。
彼が180cm超の巨体で、彼女が165cmくらい。
ちょうど頭一つ分ほどの身長差があるから、意識しないと、歩幅の大きい彼が先行してしまう。
それに見た目の面でも、釣り合っているように思えた。
健康的な浅黒い肌。
切れ長な瞳。
通った鼻筋。
ふっくらとした、柔らかみのある唇。
左頬のほくろは妙な色気を醸し出しており、同性の俺から見ても、年齢以上に大人びて見える。
いい顔のパーツが、ほとんど揃っている。
京都の町並みが似合いそうな、美男美女のベストカップルだ。
でも、二人が親密なのは、なんだか面白くない。
モヤモヤしたものが、心の底でくすぶっていた。
「仲良しなだけだろ。なんでもかんでも恋愛に結びつけるなよ」
心の内を、そのままぶちまけた。
俺の言葉に、理沙はポカンと口を開けて面食らっている。
眉一つ微動だにしない表情からは、理沙が何を訴えたいのか、まるで読み取れなかった。
「若林みたいにならないと、千尋に好かれないよぉ」
喋る理沙の顔は、ピエロみたいに作った笑顔だった。
さっきまで元気だったのに、どうしたんだろうか。
頭の上に疑問符が浮かぶ。
けれどその違和感を、理沙に直接ぶつけることはしなかった。
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yuu_garakuta

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