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ファンタジー小説「迫害されし冒険者たち」 第四話

ファンタジー小説「迫害されし冒険者たち」
05 /20 2018
三人が注文を終えると、暫くの間無言のまま時だけが過ぎていった。
どちらでもいい。
話を振ってくれないだろうか。
淡い期待を抱きつつ、ヘンリーは二人はちらちら見遣った。
が、彼らは沈黙を保ったままだった。
しょうがない、俺が切り出すしかないか。
意を決したヘンリーは、リチャードの方へ向き直った。
「それ、いいものだな。でも、そんな物を見せつけてると、ガラの悪い奴らが寄ってくるぞ」
ヘンリーは、高価そうな銀製のペンダントを指差した。
「なんだ、アンタもコイツを奪おうってのかい?」
リチャードは紐を握り締めながら、ヘンリーを睨む。
思わぬ反応に、ヘンリーは戸惑った。
「いや、そういうつもりじゃねぇよ。あ~、ええっと……」
うろたえ、場を収めようとした。
しかし言葉を覚えたての赤ん坊のように、途切れ途切れにしか単語が思い浮かばない。
取り乱すヘンリーを見て、リチャードは吹きだした。
「……フフッ、悪い悪い。まぁ、いいぜ。俺も暇だからな。お前たちに同行してやろう」
一問答の末、リチャードは了承した。
「ただし、70G(ゴールド)貰う。いいか」
「おい、確か相場は15Gだろ?! それはいくらなんでも高すぎるぞ」
ヘンリーが、カウンターをバンと叩いた。
庶民の1日の給与が、14S(シルバー)~16Sほど。
乱暴だが1日1G稼げると考えると、1年間暮らすために必要な金貨は、365枚くらいになる。
冒険者たちは、庶民と比べれば高給取りだ。
しかし、武器や防具は基本的に消耗品で、携帯食料などの雑費もバカにならない。
庶民とほとんど給与の差がない新米の冒険者にとって、約2カ月分の生活費70Gはとんでもない大金なのだ。
「……最後まで話を聞け。洞窟近辺には『ポイズン・ジェリー』が生息しているのさ」
ポイズン・ジェリー。
生まれたての子犬ほどの大きさの、緑色の粘性生物で、ジェリー状であることから、その名が付いたモンスターだ。
斬撃や打撃はほぼ効かず、魔術をいかに命中させるかが肝要になる。
「なるほどね。魔術師のアンタが必要になるって言いたいわけか」
リチャードは、こくりと頷いた。
「飲み込みが早くて助かる。洞窟には厄介な霊体モンスターも出現するからな。お前たちにとっても、悪い話ではないと思うが」
彼の言うことも一理ある。
しかし、即答できるような金額ではない。
ヘンリーは目を閉じ、顎に手を添えて思案した。
「前金15G。残りは後でいいぞ」
すぐには払えないことを察したリチャードが言う。
「ちょっと待っててくれ、数えるから」
ヘンリーが茶色い巾着袋を取り出し、紐を緩めた。
しかし、彼はそれを静止する。
「朝に渡してくれ。ここだと見づらくてかなわん」
「そうか。んじゃ、明日な」
リチャードとの契約を結んだヘンリーは、迷惑を掛けたベラに一敬すると、そそくさと酒場から出ていった。
その一部始終を見ていた客が小馬鹿にした態度で、リチャードにも届くように、男が声を張り上げた。
「おいおい、ベラちゃん。新米くんにリチャードなんかを紹介するなんて、キミも悪い子だなぁ」
「大丈夫よ。彼、強いもの。きっと、あの子たちをしっかりサポートしてくれるわ」
その言葉に負けじと、ベラが大声で返す。
リチャードは反応を示すことなく、うつむいたままだった。
言われっぱなしで面白くない彼女は、頬をぷうっと膨らませた。
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yuu_garakuta

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